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岡田仁志 世界選手権従軍レポート その1

 

ブラサカJAPAN、10年目の本気。
in The 5th IBSA World Blind Football Championship 2010
文と写真/岡田仁志


現地時間 2010年8月13日(金)

ヘレフォード到着直後の選手団

ヘレフォード到着直後の選手団

成田空港からヒースロー空港までおよそ12時間、そこからバスに揺られて3時間半。現地時間の夜9時に、イングランド西部のヘレフォードに到着した。世界選手権の会場RNC(視覚障害者のための大学)内の施設に宿泊する日本選手団と別れて、会場近くのB&Bにチェックインしたばかりなので、ヘレフォードのことはまだよくわからない。かなりの田舎町であることは間違いないが、そのあたりのことは明日以降、おいおい明らかになるであろう。とにかく涼しいよ、イングランドは。そして釜本美佐子団長以下、日本選手団は全員が元気だ。初の国際試合となるハジ(寺西)君は、12時間のフライト中、トイレに立つことさえなく、2度の機内食のとき以外はほぼ全面的に寝ていたという。声も野太いが、神経も図太い男である。じつに頼もしい。

で、いま私の横では、同室の大学生ウエハラ君(JBFAが送り込んだUstream配信担当者)が、ポケットWiFiとやらの設定と格闘しているのだった。ときどき、首をひねったり、首をひねったり、首をひねったりしている。今日から大会終了まで、このブログをJBFAサイト内で更新することになったわけだが、書いたものがちゃんと送れるようになるといいなぁ(送れないなら書かなくてもいいってことだなぁ)……などと心配していたら、ウエハラ君の「あ」という声と同時にネットがつながった。いまの時代、ネットさえつながっちまえば勝ったも同然である。安心して、ぐっすり眠りたいところだ。でも、それでは何のためにネットをつなげたのかよくわからないのだし、JBFA事務局長マツザキさんからは「開幕前にこの大会の見どころを書くように」と厳命されている。長旅で疲れ切った体にムチ打たねばなるまい。

そこで、日本チームのことは明日の公式練習を見た上でじっくり書くとして、とりあえずは大会全体のことに触れておこう。視覚障害者サッカーの世界選手権は、国際ルール制定から2年後の1998年に始まった。過去4回の優勝国はブラジル、ブラジル、アルゼンチン、アルゼンチンの順である。常に南米の2強が覇権を争ってきたわけだ。5回目となる今大会は、「三つめの初優勝国」が出るかどうかがひとつの大きな見どころであろう。その可能性は、大いにある。というのも、日本が初めて出場したアルゼンチン大会以降の4年間に、ブラインドサッカーの世界には大きな状況の変化があった。「中国の登場」である。

2007年のアジア選手権(韓国大会)で国際大会にデビューした中国の驚異的なテクニックと戦術については、これまでにも事あるごとに書いてきた。詳しくは、拙著『闇の中の翼たち』(幻冬舎)や、昨年のアジア選手権前にSOCIOのサイトで連載したコラムの第7回などを読んでいただきたい。その中国に2008年の北京パラリンピックで初めて対戦したブラジルやアルゼンチンの関係者は、強い衝撃を受けたはずである。いくら地元開催とはいえ、アジアの後発国に銀メダルを持って行かれるとは思っていなかったはずだ。しかも決勝戦は、タイムアップ寸前にブラジルの第2PKが決まるまでは1-1の大接戦。その後も中国は、さらなるバージョンアップを遂げている。北京パラではひたすら単騎のドリブルで攻撃していた中国が、2009年のアジア選手権(日本大会)では「パス」をからめた多彩なプレーを見せるようになった。その急速な技術革新ぶりを見れば、今回の世界選手権を制しても不思議ではない。いや、優勝候補の筆頭と言ってもいいぐらいだ。

とはいえ南米の2強も、北京で苦しめられた相手への対策は講じているに違いない。日本の試合以外では、そこが最大の注目点だ。今大会は、ブラジル、中国、アルゼンチンという北京パラのメダリストがグループBに同居する。これは、グループAの日本が準決勝進出を狙いやすくなったという意味でありがたいのはもちろん、ブラジルとアルゼンチンの「中国対策」を見られるという意味でも、大変おもしろい組み分けだ。まずは15日、ウエハラ君がテスト配信を(たぶん、ときどき首をひねりながらも)成功させるはずのブラジル×中国戦のUstream配信を、是非ご覧いただきたいと思う。

もちろん日本も、今日の出国前に成田空港で行われた結団式で、風祭喜一監督が「グループAを1位で抜けて、ブラジルやアルゼンチンと戦いたい」と話したとおり、「3つめの初優勝国」の座を狙っている。日本のブラインドサッカーは、2001年の秋に大阪で最初の講習会を行ったときに始まった。それを1年目とすれば、今年は10年目。「ワクワクすると同時に、ドキドキしてもいる」と言う、風祭監督のいつになく厳しい目つきに、私は「本気」を感じている。

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